1923-2003 Kristian S. Vedel(クリスチャン・ソルマー・ヴェデル)は、デンマーク出身のインダストリアルデザイナーであり、家具デザインを中心に活躍した人物です。 北欧モダンデザインが成熟期を迎えた時代において、合理性と実用性を重視したデザインで知られ、北欧モダン後期を代表するデザイナーの一人とされています。彼は、Kaare Klint(コーア・クリント)に始まるデンマークの機能主義の流れを受け継ぎながら、家具を工芸的な表現としてではなく、工業製品として捉え直す視点を明確に打ち出しました。 ヴェデルのデザインは、装飾をできる限り排し、構造や寸法、使い方の分かりやすさを重視している点に特徴があります。見た目の美しさよりも、論理的で無駄のない設計を大切にし、量産のしやすさや輸送効率、保管のしやすさといった、製造から流通に至るまでの過程を含めてデザインを考えました。この考え方は、職人技を重視してきた従来の北欧家具の価値観から一歩進んだものでした。 また彼は、家具を完成された固定的な形として提示するのではなく、使う人が目的に合わせて組み替え、使いこなしていくものとして捉えました。その思想を象徴する代表作が、1963年に発表された「Modular Cube」です。同じ寸法の立方体ユニットを組み合わせることで、椅子やテーブル、収納などさまざまな用途に対応できるこの家具は、単純な形でありながら高い自由度を持ち、後のモジュラーデザインやシステム家具の先駆けとして高く評価されています。 ヴェデルは、デンマーク・モダンを工芸中心の伝統から、より工業的で論理的なデザインへと導いた存在であり、北欧デザインの発展に重要な役割を果たしました。